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ふるさと雑感

けんぼうの夢想話



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日曜日の朝 かみさんがお茶を飲みながら 作家の佐藤愛子が
共有する相手がいなくなり 寂しくなったと新聞に書いてあったけど 
その共有する相手て誰だろうかと聞いた
作家の佐藤愛子?     共有する相手?

たぶん昨年10月になくなった 北杜夫だろうと思った 
北杜夫じゃないだろうかと かみさんにいいながら
私はドクトルマンボウ青春記のことをおもっていた

もう半世紀近い前になるが 
今熊本で医者をやっている友人から
浪人しているころ貰った本であった
北杜夫の旧制松本高校時代を中心とした青春エッセイで
北アルプスの常念岳と安曇野が表紙になっており
ユーモアあふれる軽妙な 疾風怒涛の世界にたちまち引き込まれた
今思えば浮世ばなれした 少々時代がかった話であるが
その頃自分のおかれた状況からか 
信州でのバンカラとカンゲキの青春にあこがれたのであろう
その後も幾度となく読み返した
その本は私にとって宝物であり 
その後の生き方に大きな影響をあたえたきがする
私はその本を長男が大学に入学するときに持たせてやった

  秋の盛りであった。路傍の草々はすがれかけ、
  豊穣の夏の気配はすでに凋落を暗示していた。
  渓流の流れの音からして寒々していた。
  過去、私はこの細道を幾度も通った。
  友人たちと、あるいは一人きりで
  (中略)
  半ばの喪心とかすかな希望を抱いて、黙々と私は歩いた。
  こんなことをして何になるのかという心細さも伝わってきた。
  しかし長く長く細道はつづき、歩くよりほかに手段はなかった
  とうとう道は岩魚止めから百曲がりの登りにかかる。
  息を切らせ、汗を滴らせて私は登った。一度も休みはしなかった。
  そして私はついに峠の頂に立ち、
  眼前に立ちはだかる懐かしい穂高の偉容を見た。
  前穂の岩壁は午後も遅い斜光を受けて白茶けて見えた。
  夏の残雪はとうになく、新雪の訪れにはまだ早かった。
  一点の雪のない穂高,
  永劫の風化にさらされ洗われた大岩壁は、圧倒的に巨大にすぎ、
  それを眺める私はあまりに微小な存在にすぎなかった。
 (中略)
  私は秋の日ざしの凝結する岩峰にむかって、
  ぴょこりとお辞儀までしたのである。 
                (ドクトルマンボウ青春記より)

青春記のなかで 私はこの徳本峠と穂高のところが一番好きで
マンボウ氏にかさね いつか岩魚止めから百曲がりを登り
秋の午後の徳本峠の頂に立ちたいと思っていた
しかし想いだけは強いものがあったが なかなか実現はしなかった
それからはや40年余りが過ぎてしまった

今朝の新聞に 74歳の「青春18きっぷ」というコラムがあった
私も私なりのささやかな冒険譚を孫に話したいものだと思っている




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by minnamiya | 2012-09-04 09:52 | Comments(0)  

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