ふるさと雑感

けんぼうの夢想話

             夏 雲

大糸線の信濃大町を過ぎしばらく行くと 左手に木崎湖 中綱湖 青木湖 の
仁科三湖といわれる三つの湖がある
一番北にある青木湖を過ぎると 列車は下って行くようになり
二つめに南神城という小さな駅がある
その南神城の民宿で 46年前の7月 竹田神社の六月灯の頃
3日間ほど過ごしたことがあった
これといった目的があって行ったのではなく
学校が夏休みとなり 穂高に登ったあと 
南神城の民宿に 学生時代の友人が逗留しており 彼に誘われるまま 訪ねていった

当時は民宿の走りの頃で 南神城の民宿も 洋風の洒落た建物で 個室だったり
料理が売り物であったり の今風のペンションとは違い
茅葺の農家を小奇麗に改装した ごく普通の民家で 寝るのも座敷に雑魚寝で 
都会の子供たちが休みを 田舎の爺ちゃん婆ちゃんの家で 過ごすようなものだった
夏の間は学生むけの学生村 冬の間は若いスキー客の宿となる
することといえば 朝から座敷でゴロゴロしていたり 漫画を見たりと退屈で
それに飽きると辺りを散歩するぐらいであった
北安曇野の南神城の背後には 3千m近い山々が聳えており
鹿島槍ヶ岳から 五竜岳 唐松岳 白馬三山に連なる 
日本の第一級の景色が見れると期待していたが 
残念ながら南神城からは 裏山の陰になり見ることができなかった
民宿の辺りは 田んぼ 畑の日本の田舎なら何処でもある景色で
南さつまの田舎育ちの身には さほど珍しくはなく
もの静かで単調な3日間であったが 私には信州の民宿にいるという
ハイカラなことだけで充分だった
そんななかで民宿のすぐ横の大糸線を 夕食前に長い貨車を引いた
蒸気機関車が通って行き 煙と蒸気を目一杯吐きながら登って行く姿は感動的で
旅心をくすぐり もの静かな一日のハイライトといってよかった
その時刻になると 友人と縁側にすわり 貨車の数を数えながら眺めていた
私の本棚の隅にある小さなスケッチブックに 南神城の民宿で描いた2枚のスケッチがある マジックペンで輪郭を描いただけの拙いものである
その民宿の縁側から描いた庭の花と 民宿の近くの小高い所から 田んぼを隔て
向こうの山々と夏雲を描いている
民宿で時間をもてあまし 退屈しのぎに描いたものだ

今回は大雪渓から白馬岳に登り 不帰ノ嶮から唐松岳へ
そして八方尾根を下りるという計画であった
前日八ヶ岳の山麓 蓼科にある中学時代の友人の別荘に世話になり
友人夫妻の手料理と ビールにはじまり 酒 ワイン 最後は芋焼酎のお湯割りと
料理 酒 会話 ミュージック 雰囲気 と5拍子も6拍子も揃った 愉しい一晩を過ごした
そして茅野から松本に出て 大糸線に乗った
車窓から安曇野の向こうに 北アルプスの雄大な山並みが望めるのだが 
あいにく雲の中 大町を過ぎるころから小雨も降りだした
梅雨明けの一番いい時期を選んで来たのだが うまくいかないものだ
簗場をすぎると いよいよ南神城である
列車は山間から やや開けた平野部へ 視界も開ける
あの民宿はと 線路添いの家を車窓から目を凝らして見たのだが
記憶にある茅葺の家などどこにもなく 今風のカラフルな家ばかりである
ただ広がる田んぼと向こうの山々は変わらないが
あの日のように夏雲の空を見ることはできなかった 


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[別荘にて]
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[白馬大雪渓]
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[白馬岳山頂]
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[こまくさ]
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[不帰ノ嶮]
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[夏雲と八方尾根]
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by minnamiya | 2017-08-12 11:47 | ふるさと雑感 | Comments(0)  

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